日本政府の気候変動対策は不十分→農家や学生ら452人が国を提訴。「真摯に取り組まなければ取り返しのつかない深刻な事態に」

日本政府の気候変動対策が不十分なため、平穏な生活を送る権利が脅かされているとして、日本各地に住む452人が12月18日、国に一人あたり1000円の賠償を求めて東京地裁に提訴した。 原告団によると、国に対して気候変動対策の法的責任を問う、日本で初めての訴訟となる。 「今すぐ行動することこそが気候正義の実現のために残された私たちの義務」 東京地裁に向かう「気候正義訴訟」の原告ら 訴状 では、「対策を講じることが可能であるが、真摯に取り組まなければ確実に取り返しのつかない深刻な事態に陥るのが気候変動」とし、「今すぐ行動することこそが気候正義の実現のために残された私たちの義務でもある」と強調した。 また、気候変動の進行の影響として「熱中症リスクの増大」「豪雨・台風被害」「生活コストの上昇」「屋外活動の制約」などの被害が生じているのにも関わらず、「国がこれらの拡大を防止するための有効な対策を講じていないことから、平穏に生活する権利を侵害」されたと指摘。 国に求める約45万円の賠償額については、「損害を金銭に換算すると原告らの損害は各1000円にとどまるものではないが、本訴訟においてはその一部を請求する」と説明している。 農家は収穫量激減。学生は体育など屋外活動が制限。熱中症被害も 原告らは、国内各地で暮らすあらゆる年代や職業の人々で、気温の上昇など気候変動の影響によって様々な被害が生じていると訴えている。 訴状では原告らが受けている損害についても説明している。 ある原告は、気候変動の影響で夏場に猛暑日が続く中、熱中症によって健康被害を受けた。また、ある未成年の原告は、猛暑により学校での体育の授業や部活動、屋外での遊びなどで制限を受けており、成長発達権が侵害されているとした。 農業や漁業の現場でも被害が相次いでいる。 農家の原告は、気候変動により作物の収穫量が激減したと主張。漁業協同組合に所属する別の原告は、暑さで夏場に死ぬアサリの量が増え、全滅状態になったと訴えている。「活動をやめた漁協もあると聞いており、地元産業の被害は深刻」としている。 気候変動の影響による猛暑や災害の激甚化により、人々の日常生活、健康、仕事、経済活動などあらゆる場面で被害が生じているという。 原告らは12月18日、東京都千代田区の司法記者クラブで会見を開き、そのような被害や提訴の背景を説明。原告の一人である、東京大学・准教授の斎藤幸平さんも会見で話し、政府による気候変動への対策強化の必要性を強調した。 呼びかけ人には、アクティビストでアーティストのeriさんやアーティストのコムアイさん、ミュージシャンの加藤登紀子さん、ノンフィクション作家の吉岡忍さんも名前を連ねている。 訴訟について会見する原告ら。右側に東京大学・准教授の斎藤幸平さん。 訴状では「内閣が決定した本日時点で有効な行政計画は、パリ協定で合意された世界の平均気温上昇を工業化前比 1.5℃未満に抑える目標を達成するために必要な削減水準に照らして著しく不十分」と指摘。 「憲法が保障する国民の平穏生活権等の人権を侵害するもの」、「国会議員は、1.5℃目標と整合する法的拘束力ある排出基準等を定める立法措置を講じる義務があるにもかかわらず、これを怠っている」として、国にさらなる対策の強化を求めている。 【あわせて読む】 「猛暑による被害、年々深刻に」「収穫が全滅」韓国の農家が気候危機に声を上げた。気候変動の責任問い、韓国電力公社などを提訴 Related... 「猛暑による被害、年々深刻に」「収穫が全滅」韓国の農家が気候危機に声を上げた。気候変動の責任問い、韓国電力公社などを提訴 猛暑や台風が韓国でも深刻化→気候変動への関心高まる。若者は「気候訴訟」で声上げ違憲判断も 「気候変動は命と人権の問題」市民ら365人が日弁連に人権救済申立てを提出。気候訴訟の原告にすらなれない日本 ...クリックして全文を読む