パソコン・スマホは2026年にかけて値上げラッシュへ。でも、価格急騰が起きにくいメーカーも。知っておきたい現状。

2025年の秋から冬にかけて、メモリ価格が急激に上昇しています(図はAIによる生成イメージ) 急騰するメモリ価格とPCパーツ市場の現状 2025年の秋から冬にかけて、PC用メモリの価格がかつてない勢いで高騰しています。メモリは、PCが一時的に情報を記憶しておくための作業スペースのような役割を担う部品です。容量が大きいほど、多くのアプリを同時に開いたり、高画質な動画をスムーズに扱えたりと、動作は快適になります。 ところが、2025年10月頃と比べ、販売店では2倍から3倍近い価格になる例が相次いでいます。特に大容量モデルの値上がりが目立っており、自作PCユーザだけでなく、販売店からも仕入れ値が急騰したという切実な声が上がっています。 さらに、値上がりの波はメモリだけにとどまりません。データを保存するSSDや、画像の描画を担うGPUなど、主要なPCパーツが軒並み値上がりしています。PCはこれらの部品を組み合わせて構成されるため、パーツ単価の上昇は製品価格に直結します。 業界報道によると、デルやレノボといった大手メーカーは、コスト上昇分を販売価格に転嫁する動きを見せています。一部のモデルでは、すでに値上げの兆しも報じられています。 図は、PC向けメモリ(Crucialブランド DDR5 PC5-44800 32GB×2枚組)の価格変動(最安値)。価格.comでの価格変動情報を元に、筆者が作成したものです。 なぜ高い?AIブームと部品不足の真相 では、なぜPC用メモリの価格がここまで急激に上がっているのでしょうか。よく「AIの影響」と語られますが、その一言だけでは実態が見えにくいのも事実です。 「AIの影響」という言葉の裏には、世界規模で進む大規模な設備投資が隠れています。私たちが利用するChatGPTなどのAIサービスは、手元のPCではなく、インターネットの先にあるデータセンターと呼ばれる巨大な施設で稼働しています。AIに大量の情報を処理させるには、一般的なPCとは比べものにならないほど多くのメモリが必要です。今や世界中の企業が競ってデータセンターを拡張しており、メモリ需要が高まり続けているのです。 ただし、データセンター向けメモリとPC向けメモリは、厳密には同じ部品ではありません。メモリメーカーは世界に数社しかなく、その多くは現在、より利益率の高いデータセンター向け製品を優先して生産しています。その結果、PC向けメモリの供給が後回しになり、市場に出回る量が減ってしまいました。 実例として、大手メモリメーカーのマイクロンは、2025年12月に一般消費者向けのメモリブランドから撤退しました。今後は、データセンター向け製品に経営資源を集中させる方針を明確にしています。 こうした動きが重なり、PC向けメモリの供給不足が深刻化しました。2025年秋には、在庫不足が一気に表面化し、急激な価格高騰につながったというわけです。 マイクロンのサイトより。同社は2025年12月3日に、一般消費向けの「クルーシャル」ブランドから撤退すると発表しました。 高騰はいつまで?2026年も続く予測 この高騰は、この先どうなるのでしょうか。しばらく待てば以前の水準に戻るのか、それとも高値が定着するのかは、多くの人が気になる点でしょう。 結論から言えば、価格上昇は当面続く可能性が高いと考えられます。市場予測や各メーカーの発言を踏まえると、少なくとも2026年いっぱいは高値圏で推移し、場合によってはさらに値上がりするとの見方もあります。 先に触れたメモリメーカーのマイクロンも、供給不足は2026年も解消しないとしています。また、複数の調査会社が、需要に対して供給が追いつかない状況が続くと分析しています。短期間での値下がりを期待するのは現実的ではありません。一部では、供給不足が2027年以降まで続く可能性も指摘されています。 結局のところ、価格は需要と供給のバランスで決まります。AIの普及でメモリ需要が急増した一方、生産設備の増強には時間がかかります。メーカー側としても、過剰な増産によって価格が下落する事態は避けたいのが本音でしょう。需要が一服した後も、生産量は慎重に調整されると考えられます。以前のような安値に戻る可能性は低いと見たほうがいいでしょう。 PCの買い時はいつ?今買うか待つべきか PCをいつ購入するかは、多くの人にとって悩ましい問題です。先に述べたとおり、デルやレノボなどの大手メーカーは、部品コストの上昇を受け、2026年に向けて製品価格を引き上げる方針を示しています。今後は、ほかのメーカーもこの動きに追随していく可能性が高いでしょう。 数か月以内に買い替えや新規購入を検討している場合、早めに動くメリットは大きいといえます。販売店に在庫があるモデルであれば、現時点の価格で購入できる可能性があるためです。 とはいえ、PCの買い替え熱はすでに高まっており、在庫不足を懸念する販売現場の声も聞かれます。購入を迷っている間に在庫がなくなり、結果として高いモデルを選ばざるを得なくなるケースも考えられます。判断の遅れが、数万円単位の差につながることもあるでしょう。 新春セールや春の新生活シーズンのセールを待つという選択肢もあります。ただし、例年と比べると、今年は大幅な値下げが期待しにくい状況です。セール時期であっても、価格が思ったほど下がらない可能性は頭に入れておく必要があります。 国内大手PCメーカーのマウスコンピューターも、公式サイト上で「価格改定を2026年1月以降、順次実施する予定」とアナウンスしています。 アップル製品が価格変動に強い理由 一方で、アップル製品は、これまで述べてきた状況とはやや事情が異なります。アップルは、コンピュータの中核となるCPUとメモリを統合したチップを独自に開発しています。この独自設計のおかげで、市場のパーツ価格の影響を直接受けにくい構造になっているのです。 さらに、世界的な大手企業としての交渉力も大きな要因です。アップルは部品メーカーと長期契約を結んでおり、他社がコスト上昇に直面する中でも、比較的安定した条件で部品を調達できます。実際、2025年末時点でも、主要製品で急な価格改定は行われていません。 こうした背景から、アップル製品は他社製PCと比べて、価格が急激に変動しにくい傾向があります。パーツ高騰が続く現在の状況では、相対的に有力な選択肢と映るかもしれません。将来のモデルチェンジでどうなるかは不透明ですが、少なくとも現時点では、価格の急騰を避けたい人にとって注目すべき存在と言えるでしょう。 メモリ高騰はスマホにも影響する? 最後に、スマートフォンへの影響についても触れておきましょう。 メモリ高騰の波は、PCだけでなくスマートフォン市場にも及ぶ可能性があります。スマートフォンには「LPDDR」と呼ばれる低消費電力タイプのメモリが使われており、PC向けとは規格が異なります。しかし、これらを製造する設備は共通しているため、データセンター向け製品の増産が続けば、やはりスマートフォン向けの供給も間接的に制限されます。 すでに具体的な動きも出ています。中国のスマートフォンメーカーであるシャオミは2025年11月に、「メモリを含む半導体価格の上昇がコストを押し上げている」と公式に認めました。最新モデルの価格設定には、このコスト増が反映されています。 ただし、スマートフォンはPCと異なり、販売中のモデルが突然値上がりするケースは稀です。影響が顕著になるのは、2026年以降に発売される新モデルからになると予想されます。販売価格の上昇だけでなく、価格を据え置く代わりにメモリ容量を前モデルより抑えるといった、スペック面での調整が行われる可能性も否定できません。 価格が上がる前に今のモデルを購入するか、新機能に期待してモデルチェンジを待つか。その選択は価値観やライフスタイルによって変わってくるでしょう。 Related... 「アカウント主は永眠しました」。気になる投稿の真相5つの可能性と、iPhone・Androidの機能 知ってる?知らない相手からの電話をAIでスクリーニング。iPhone「iOS 26」の新機能がスゴすぎ。使いたい人は設定して。 Anker愛好家のおすすめ、教えます。置き時計式「“超”高機能スピーカー」が便利すぎる! ...クリックして全文を読む