冬をハッピーに過ごす北欧の習慣「フリルフスリフ」とは。寒くても外を楽しむためのコツも

ハイキングやガーデニングもフリルフスリフに入るという 寒さが増し日が短くなってくると、外に出るのが億劫になる人も多いだろう。 雨や風、雪の日に散歩に出かけるのは、多くの人にとって「楽しい体験」とは言い難い。しかしノルウェーでは、多くの人たちがそれを「大切な習慣」として受け継いでいるという。 ノルウェーでは、1年を通して外に出ることが一般的だ。その背景には 「friluftsliv(フリルフスリフ)」 という概念がある。 friluftsliv(フリルフスリフ)とは これはノルウェーの劇作家ヘンリック・イプセン氏が名付けた言葉で、「気ままなアウトドア生活」や「自然の中の暮らし」と訳される。 オランダのアムステルダムを拠点とする健康心理学者であり、ノルウェーの冬のマインドセットの専門家Kari Leibowitz氏によると、このフリルフスリフにはストレス軽減や気分の向上など、心身に幅広い効果があるという。 これは単なるトレンドではなく、ノルウェーではフリルフスリフを学ぶ大学の講義や専攻コースまで存在するほど、深く根付いた習慣なのだという。実際に大学でフリルフスリフを教えるHelga Synnevåg Løvoll教授によると、フリルフスリフは教育、伝統、自然などすべてに通じるものであり、子どもたちは幼い頃からそれを大切にするよう教えられるという。 Leibowitz氏も「それは『自然とのつながり』だと私は捉えています。日常生活の一部として、自然や屋外と関わりながら生きるということです」と語っている。フリルフスリフは特別なイベントではなく、「日々の暮らしの一部」なのだ。 世界中の他の地域でも人気があるスキー、ハイキング、サイクリングやガーデニングなども、フリルフスリフの範疇に入る活動だと Løvoll氏は言う。 ノルウェーでは「自然はみんなのもの」 ノルウェーの首都オスロの臨床心理学者Inga Gentile氏は、フリルフスリフはノルウェーの文化的価値観を強く反映していると語る。 「その1つは『自然はみんなのもの』という価値観です。私有地は存在しますが、概念的・理論的には自然は私たちみんなの資源であり、共同体全体のものでもあるのです」とGentile氏は述べる。 ノルウェーには「自然享受権(right to roam)」と呼ばれる法律があり、たとえ私有地であっても国内の未耕作地には誰でも立ち入ることができる。この権利はハイキングコース、湿地、山、湖畔などにも適用されている。 「この考え方と習慣はとても興味深いもので、自然にアクセスしやすくするだけでなく、平等という文化的価値も反映しているのです」とGentile氏は語る。 「人々に外に出て欲しいという意思が、制度としてもきちんと存在しているのです」 フリルフスリフを実践するコツ もちろん、こうした制度が自然を楽しみやすくしているのは事実だが、ノルウェー以外の地域でもフリルフスリフの恩恵を受けることはできる。フリルフスリフの効果と、日常生活に取り入れるためのアドバイスを以下で紹介しよう。 ・小さく始める いきなり寒中キャンプや長距離ハイキングに挑戦する必要はない。たとえば仕事後の夜の散歩や、朝の短いウォーキングなどから始めて、秋冬の屋外時間を少しずつ増やしていけばよい。 「暖かい季節に好きだったことを、秋冬にも取り入れるのもいい」とLeibowitz氏は話す。例えば、秋冬は海で泳ぐことはできなくても、ビーチを散歩することはできる。あるいは、防寒機能のあるランニングウェアを買って、お気に入りの夏のトレイルに戻るのも良いだろう。 「他の季節に楽しんでいたことを思い出して、『暗く寒い季節向けにどうアレンジできるか』『どうすればそこに楽しさを見出せるか』を考えてみてほしい」という。 Gentile氏は「自然の定義を広げること」を勧めている。「自然は必ずしも原生林ではありません。公園や木のある場所を訪れること、鳥を眺めることでもいい。これらすべてが自然との関わりです」と述べる。 Løvoll氏によれば、ブランケットにくるまって屋外でコーヒーを飲んだり、出勤前に公園で5分間過ごすだけでもフリルフスリフになるという。 こうした行動はすべて、心身の健康に良い影響をもたらす。 外でコーヒーを飲むだけでもいい ・適切な服装を ノルウェーの人々がフリルフスリフを実践できる大きな理由の1つは、天候に合った服装をしているからだ。Løvoll氏はそれは子どもにも当てはまると言う。 「正しい服を着せれば、雨の中でも平気で遊べる、それが重要なんです。太陽を待ってはいられないから」 雨でも雪でも風でも寒くても、天気予報に左右されることはない。「ノルウェーには『悪い天気はない、悪い服装があるだけだ』という表現があるほどです」とLeibowitz氏は紹介する。 ・秋冬に外に出ることが気分を上げると自覚する もちろん、気温が20度前後で晴れている日の方が外に出やすいのは確かだ。しかし、それはノルウェーの日常ではない。 「多くの人が冬に気分が落ち込みますが、新鮮な空気、自然とのつながり、体を動かすこと――この3つはすべて自然の抗うつ薬なのです」とLeibowitz氏は言う。寒い季節にフリルフスリフを実践することで、「冬の憂うつ」への対抗手段になるかもしれない。 季節に関係なく、屋外に出ることは「プラス効果を得られるチャンス」として捉えることが大切だ。秋でも冬でも春でも夏でも、自然に触れることは心の健康に効果がある。「特に冬の暗闇の中で、光と闇のコントラストの中に見る美しさは、学んで楽しむ価値がある」とLøvoll氏は語る。 「冬にできないと思い込むこと自体が、すべてを難しくしてしまう」とLeibowitz氏は言う。外に出て楽しむことこそ、暗い季節に健康と幸福を保つ鍵なのだ。 ただし、フリルフスリフを実践したからといってメンタルヘルスの問題が生じないとは限らない。「ノルウェーにももちろん、他の国と同じようにうつ病はありますが、天気との関連はそれほど強くありません」とLøvoll氏は述べる。 ・ストレス軽減にもつながる 多くの研究が、自然の中で過ごす時間がストレスを下げることを示している。 「自然の中にいると、戦うか逃げるかを司る神経系の働きが弱まり、私たちを落ち着かせる副交感神経が活性化する」とGentile氏は説明する。 現代社会や過剰なハッスル文化では、ストレス反応が頻繁に作動しがちだ。「その結果、消化器系、心血管系、免疫系など、体のあらゆるシステムに負担がかかる」という。 自然の中に身を置くことで、その過剰な活性を抑え、心拍数やストレスホルモンを下げ、心の落ち着きを取り戻すことができるとGentile氏は述べる。「それが心身両方の健康に良い影響をもたらすのです」 ・秋冬の「ゆるやかな時間」を楽しむ Løvoll氏によると、屋内屋外に関わらず、秋と冬の暗さを受け入れることもノルウェーのライフスタイルの一部だという。夏のように太陽が降り注ぐ季節とは違うが、秋冬にも魅力がある。 ノルウェーでは、秋冬にキャンドルを灯したり、温かいお茶やココアを飲んだり、暖炉に火を起こしブランケットにくるまったりすることが習慣になっているという。「活動的な夏とは対照的な時間がまた良いのです」とLøvoll氏は語る。 秋冬に向かうこの時期は、「心を開き、ゆるやかなペースを楽しむ」姿勢が大切であり、それこそが、ノルウェー文化に深く根付いた価値観なのだ。 ハフポストUS版 の記事を翻訳・編集しました。 Related... 疲れ果てた教師がコストコに転職。そこで待っていたのは...【米教師のセカンドキャリア】 フィンランドはなぜ「世界一幸せな国」なのか。そこには6つの価値観の違いがあった フェミニストから保守派、主婦や働く女性まで...。アイスランドの9割の女性が参加した「女性の休日」ムーブメント。成功のカギはなんだったのか ...クリックして全文を読む