ホワイトハウスで世界中の国に対する関税を発表したアメリカのトランプ大統領(2025年4月2日) アメリカのトランプ大統領は4月、 世界中の国に関税を課し 「今日は解放の日だ」と宣言した。 その目的がアメリカ国民を仕事から“解放”することだったのであれば、その通りになったと言えるだろう。 トランプ氏が関税で増やそうとしていたはずの国内製造業の雇用は、関税発表以降、毎月減り続けている。関税を課した4月時点と比較すると、製造業の雇用はすでに約6万7000人減少した。 これはトランプ氏の約束や予測とは正反対だ。 トランプ氏は関税を発表した時、ホワイトハウスのローズガーデンで「我々はほんの数週間で、すでに1万人の新たな製造業の雇用を生み出した。それは1カ月間に起きた。長い間目にしたことのない数字だ」と語ったが、それは事実ではない。 さらに演説では「雇用と工場はこの国に勢いよく戻ってくるだろう。すでにそれを目にしている」と予測したが、実際にはそうなっていない。 バイデン政権との差は歴然 労働省がまとめた統計からも、雇用全体が厳しい状況にあることは明らかだ。特に前大統領のバイデン時代と比較してその差は歴然としている。 バイデン政権の4年間で、アメリカでは年間400万人以上の雇用が増加した。これを月平均すると33万6225人になる。 ミシガン大学の経済学者ジャスティン・ウォルファーズ氏は「関税だけの問題ではなく、不確実性や混乱、能力の欠如、経済政策に対する過激で独特のアプローチも原因だ」と指摘する。 新型コロナウイルスで失われた雇用の回復が主だった最初の2年間を差し引いても、バイデン政権下の2023年2月〜2025年1月までの間に年間で210万人、月平均で17万8042人の雇用が増加した。 これに対し、トランプ氏が大統領に復帰した後に増えた雇用は合計49万9000人にすぎない。これは月平均では4万9900人だ。 その大半は就任後最初の3カ月に集中しており、関税を発表した翌月の5月から11月まででは、雇用の純増数は11万9000人、月平均わずか1万7000人にとどまり、純減した月もある。 ウォルファーズ氏は「両政権の雇用創出率には大きな違いがある。その一因は、トランプ氏が文字通り『より小さなアメリカ』を選んで人口増加が縮小したことだ。その結果、現在はそれほど多くの雇用増が必要なくなっている」と話す。 「おそらく最も良い数値は失業率だが、それも2025年を通じて一貫して上昇している。これは関税だけでなく、不確実性の急増と、企業や消費者の信頼感の急低下と一致している。因果関係を結びつけるのは難しくない。経済政策は混乱しており、首尾一貫せず、能力のない人たちによって運営され、実行の仕方もずさんだ」 ハフポストUS版はバイデン政権との雇用実績の比較についてホワイトハウスに問い合わせたが、これまでに回答はない。 アメリカ・ミネソタ州セントポールで行われた反トランプデモで掲げられた「共和党の関税はアメリカを再び破産に追い込む!」と書かれたプラカード(2025年10月25日) 食品価格も高騰 トランプ氏の関税政策は食料品のインフレ率を大幅に押し上げている。食料品のインフレ率はバイデン政権最後の年には1.8%まで低下していた。しかしハフポストUS版の分析では、トランプ氏が関税を課した後、3.1%に跳ね上がった。 バイデン政権でホワイトハウス報道官を務めたアンドリュー・ベイツ氏は、当時の上司はトランプ氏が大統領になればこうなるだろうと予測していたと語った。 「バイデン氏と民主党が警告していたように、トランプ関税は労働者に対する歴史的な消費増税となり、コストを押し上げ、サプライチェーンを混乱させている」 「トランプ政権発足から1年が経ったが、共和党は、新型コロナウイルスから回復した後にどの国よりも堅調だった雇用創出実績を、不況レベルの雇用喪失に置き換えた。これは客観的な事実だ」 トランプ氏は12月17日に行った 演説 で、自分が大統領に就任した時に「インフレは過去48年で最悪だった。アメリカ市場史上最悪だと言う人もいる」と主張した。 しかし実際には、第2次トランプ政権が発足した時にインフレ率は3%まで低下しており、雇用は堅調で、失業率も低く、経済は着実に成長していた。2017年の第1次政権発足の際も、同じような状況だった。 その最初の4年間でトランプ氏は主に中国を相手に貿易戦争を仕掛け、その結果、製造業と農業で小規模な景気後退が起きた。 第2次政権では、貿易戦争の相手は世界のほぼすべての国に及んでおり、影響はより深刻になっている。 トランプ氏の首席補佐官であるスージー・ワイルズ氏も、関税政策について「予想していた以上に痛みを伴うものだった」と12月に公開された ヴァニティ・フェア のインタビューで認めている。 ハフポストUS版 の記事を翻訳しました。 Related... 2025年を振り返る「日本人ファースト」に覆われた下半期、そして第二次トランプ政権により後退・激変した数々のこと トランプ、エプスタイン元被告の飛行機に「報じられた以上に多く乗っていた」新たに公開された文書に記載 トランプ、自身を批判するテレビ局の『放送免許』を取り消すべきと投稿。深夜番組司会者を「哀れな失敗者」と揶揄 ...クリックして全文を読む