ディズニーで働く日本人アーティストがぶつかった言語の壁。「言葉で表現できない」を乗り越えた発想の転換【ズートピア2】

ウサギの新米警官「ジュディ」とキツネの詐欺師「ニック」が夢の都市「ズートピア」の“大事件”を解決してから約10年ーー。 続編『ズートピア2』が公開され、大ヒットを記録している。 同作では、ニックは警官に転身し、ジュディと正式なバディに。100年ぶりにヘビが出現して大パニックのズートピアで、ふたりは街の誕生に秘められた謎を明らかにすべく過去に迫る。 たくさんのキュートな動物たちやふたりの絆はもちろん、前作には登場しなかったズートピアの様々なエリアが描かれ、偏見や差別、権力など、社会的なテーマにも踏み込んでおり、見所がたくさん詰まっている。 そんな同作には、実は複数の日本人が参加しているのをご存知だろうか。その1人が、ストーリー・アーティストの鳥海ひかりさんだ。 これまで歩んできた道のりや、『ズートピア2』の裏側、キャラクターたちへの思いについて聞いた。 【絵を描くことと動物が大好きだった】 鳥海さんは高校まで日本で育ち、大学進学のために渡米。小さい頃から絵を描くのが好きで、長編アニメーションについて学ぶためアメリカのCalArts(カリフォルニア芸術大学)に進学し、ピクサーでnインターンとして映画『リメンバー・ミー』にバックグラウンドアニメーターとして関わった。 鳥海ひかりさん インターンでは3Dアニメーターなどを経験したが、大学卒業前に「自分で絵を描くという作業自体がプロセスの重要な一部になっている仕事を選びたい」と、脚本を絵に起こして紙芝居のようにビジュアル化するストーリー・アーティストの道を選択。 卒業後はエミー賞受賞作『ONI ~ 神々山のおなり』など、名だたる作品に関わり、2022年にディズニー・アニメーションに入社した。 「本当にちっちゃい頃から絵を描くことが大好きで、それは今も変わっていません。動物も大好きで、女の子など人間のキャラクターよりも動物をとにかく描いている子どもでした。動物が戦うなど結構ものものしいシーンを描くのが好きだったので、今回ズートピアの制作に参加することを両親に言ったら『ぴったりじゃん』と笑っていました」 【英語で足りない分、絵で頑張る】 大学でアメリカに来るまでは「自分は英語ができる」と思ってたという鳥海さん。しかし実際に来てみると全く違ったという。 「初日から同級生が何言ってるのか全然わからなくて、言語の壁が1番大変で、最初の5年くらい特に苦労しましたね」 とアメリカ生活を振り返る。 「とにかく自分の意見がそもそも言えない状態で数年間過ごし、相手の言っていることが分かるようになるまでも結構かかって。分かってからもその場ですぐ返答したり、スピーキングがついてこない。それがなかなかできなくって歯がゆい思いをしていた時期が長かったです」 ディズニー・アニメーションのストーリー・アーティストたち しかし鳥海さんの場合、武器となる「絵」のスキルを磨くことが、英語で足りない部分を補う手段となった。 「私の仕事の場合は、言葉で表現できない代わりにどうにかして絵で人一倍伝えるようにしないとっていう方向に進めたんです」 描いたストーリーボードをプレゼンするときも、英語ネイティブでない分 「代わりにどうやったら絵で伝えられるかとか、他に使えるスキルで闘っていこう、とシフトすることができた」 と話す。 【参加が決まった時は「とにかく嬉しかった」】 ディズニーに入社して約4年になるという鳥海さん。コロナ禍での入社もあり、基本はリモートで仕事をし、スクリーニングがあるときなどは、家から飛行機で約1時間かけてスタジオに出勤するという。 鳥海さんの仕事の様子 『ズートピア2」制作への参加は途中からだったというが、参加が決まった時の心境を鳥海さんはこう振り返る。 「『ズートピア』はまだ学生の時に観ていて、その時から大ファン。最初は別のプロジェクトにいて、横で『ズートピア2』を作っているのを見て『いいな』と思っていたんですけど。自分が入れると思ってなかったので、すごく嬉しかったですね」 【止まらないウサギ愛】 『ズートピア2』の制作に参加することが、鳥海さんにとってどれだけ大きな喜びだったのかーー。 鳥海さんの「ウサギ愛」「動物愛」そして「ジュディ愛」に溢れるエピソードを聞けばよく分かる。 「私がどれだけウサギを好きか話してもいいですか?」 と語る鳥海さんはこれまで何匹ものウサギを飼ってきた大のウサギ好き。現在も2匹の夫婦のウサギを飼っている。 『ズートピア』のウサギ、ジュディも大好きだと言い 「この作品に入る前から『ジュディ』ガチ勢だったんで。アメリカのスターバックスで注文するときに名前を聞かれると、『ひかり』と言っても聞き取ってもらえなくて面倒くさいので、「ジュディ」って名乗っていたんです」 というほどだ。 その愛は、キツネのニックにも...。 「ニックも大好きです。ちょっと皮肉屋だけど、中身は優しい。あとちょっとかわいそうな過去もある。だから、私的にジュディも可愛いんですけど、ニックはより憎くて可愛いです」 『ズートピア2』のプロジェクトに入ると決まったその日から、前作を観直し、ふたりを描く練習をたくさんしたという鳥海さん。製作中には飽きるほど描いたかと思いきや、「まだニックとジュディを描き足りない」というから驚きだ。 鳥海さんが手がけた重要なシーンの1つ【ストーリーボード】 鳥海さんが手がけた重要なシーンの1つ【映画】 今作では、新たなキャラクター、馬の「ウィンドダンサー市長」が登場するが、鳥海さんは乗馬を習っていたほどの馬好きでもある。映画終盤にあるウィンドダンサー市長の「アクションシーン」の担当も務めた。 鳥海さんは同作品の制作を振り返り、 「自分が幼稚園生の頃から描いていた動物たちのオールスターみたいなプロジェクトだったので、描いていてとても楽しかったですね」 と余韻に浸るかのように語った。 【シンプルな夢】 鳥森さんは現在、2026年全米公開予定のディズニー・アニメーション長編映画『Hexed』のストーリー・アーティストを務めている。 すでに「世界のディズニー」でアーティストとして働いているが、これからの「夢」について尋ねると、シンプルにこう答えた。 「もっと絵が上手くなりたいですね。周りに本当に上手い人がたくさんいて、自分もこういう風に描けたらなっていう刺激を日々もらっているので。もっといい絵を描きたいですね」 『ズートピア2』キービジュアル 『ズートピア2』は、全国で現在公開中 【あわせて読みたい】 ディズニーの日本人ストーリー・アーティストが語る、『ズートピア2』の魅力とその裏側にある情熱 ...クリックして全文を読む