仕事と並行して韓国語を学ぶ社会人が増えています。推し活や韓国ドラマの影響に加え、出張や旅行でも使えるようにしておきたいという実務的な目的もあるようです。 こうした韓国語学習の初心者に向けて、京都大学で言語学を専攻し、現在は韓国語講師を務めるスンジュンさんは、「文法より先に、まず音から順番に学ぶべきだ」とアドバイスします。 実際、多くの学習者が文法中心の勉強に偏り「勉強しているのに話せない……」という壁に直面しがちです。では、そうした停滞期を避け、着実にステップアップするにはどうすればいいのでしょうか。前編では、プロが教える効果的な勉強法を紹介します。 こちらも読みたい> 韓国語の勉強におすすめの番組は?京大卒・人気講師が語る「アプリ」の落とし穴と検定試験の選び方 推し活・旅行で役立つ韓国語フレーズ集。ファンミで気をつけるべき表現とは?“推しが喜ぶ言葉”を聞いた スンジュンさん 語学学習の基本は「音を再現すること」 ――そもそもなぜ、新しい言語を学習するときに発音、つまり“音から学ぶこと”が重要なのでしょうか。 人間が言語を習得していく自然なプロセスを考えたとき、「まず耳で聞き、それをまねして、少しずつ発音できるようになる」というのが本来の正しい順番だからです。 赤ちゃんが母語を覚えていく時期のことを思い出してみてください。赤ちゃんは、意味や文法のルールを理屈で理解しているわけではありませんよね。親が話す言葉を毎日繰り返し聞いて、それをそのまま真似することで、徐々に言葉を自分のものとして習得していきます。私たちが母国の言葉を自由に話せるようになったのも、この自然な過程をしっかりと踏んできたからこそなのです。 この観点から見ると、学習の初期段階で、文法事項がまとめられた教材をひたすら丸暗記するという方法は、本来の習得プロセスとは大きくかけ離れています。もちろん、文法そのものを否定するわけではありませんが、音の感覚が身についていない状態で知識だけを積み重ねても、実際のコミュニケーションには結びつきにくいのが現実です。だからこそ、韓国語学習においても、まずは「聞いた音をそのまま再現できるようになること」を最優先してほしいです。 ーーではまず、どのような学習から始めたらよいのでしょうか。 私がおすすめするのは、自分が好きだと思えるコンテンツを活用することです。具体的には、お気に入りの韓国ドラマやバラエティ番組、他にも推しが出演しているYouTube動画などがよいでしょう。 私の場合は、ジブリ作品が大好きなので「ハウルの動く城」や「千と千尋の神隠し」などを観て日本語を学びました。 語学学習において何よりも重要なのは、とにかく継続することです。興味を持って楽しめるコンテンツであれば、集中力も続きやすくなりますし、楽しさを保ったまま学習を習慣化できるようになります。 また、学習に使う素材(音声)の長さも大切です。最初は30秒から1分程度の短いフレーズを選んで「シャドーイング」をするのがよいでしょう。シャドーイングとは、流れてくる音声を聞きながら、1〜2語ほど遅れて影(シャドー)のように後を追って発音する練習方法です。短い音声であれば、何度も繰り返し練習しやすく、うまく言えたときの達成感も得やすくなります。そして学習習慣ができたら、3分、4分、5分……と、素材を徐々に長くしていくことで、無理なくレベルアップしていくことができます。 イメージ写真 シャドーイングの効果的な「7ステップ」 ーー効果的なシャドーイングの方法を教えてください。 私は7つのステップで行うシャドーイング法をおすすめしています。それぞれの意図を理解しながら進めると、より効果が高まります。 文章の意味を理解する スクリプト(韓国語の字幕や台本)を見ながら音読する 音源を再生し、一時停止しながら真似する スクリプトを見ずに音だけで真似する 聞き取りにくい部分を重点的に練習する 一時停止せずに通してシャドーイングする 自分の声を録音し、元の音声と同時に再生して比較する 特に重要なのは、 (1) 文章の意味を理解すること と (4) スクリプトを見ずに音だけで真似すること です。なぜなら、スクリプトを見ながら音声を聞くと、理解したつもりになり、実際には音そのものが耳に残っていないことが多いからです。つまり、音だけに集中できる環境を意図的につくることが上達の鍵となります。 ーー忙しい社会人でも、この方法は続けられるのでしょうか。 もちろん、十分に可能です。シャドーイングという練習法の大きなメリットは、短時間でできることにあります。例えば、30秒〜1分の素材であれば、毎日の通勤時間やちょっとした休憩時間、就寝前などのスキマ時間を使って練習できます。 語学学習では週末に長時間まとめて学ぶよりも、毎日少しずつでも継続するほうが成果につながりやすいものです。しかし、仕事で忙しく、なかなか学習時間を確保できない場合は、シャドーイングに加えて単語の暗記も無理のない範囲で並行して行い、この2軸で学習を進めていくと、より効率よく力を伸ばすことができます。 シャドーイング+単語の暗記から始める ーーなぜ、シャドーイングだけでなく、単語の暗記も行うとよいのでしょうか。 自分が知っている単語の量は、そのまま会話能力に直結するからです。本格的に英語学習をした経験がある方なら共感してもらえると思うのですが、いくら文法を完璧に理解して発音がよかったとしても、知っている単語が少なければ文章を組み立てることができません。 そのため、シャドーイングで練習したフレーズの中に含まれる単語を別に覚えた単語に置き換えてみるだけで、表現のバリエーションは一気に広がります。 ーーでは、文法の学習はいつ始めればよいのでしょうか。 発音やリスニングの土台が整ってから取り組むことをおすすめします。シャドーイングを続けていると、文の構造や語順のリズムが自然と頭に入ってくるため、あとから文法を勉強する際に、理屈の理解が驚くほどスムーズになります。 分厚い文法書を開いて、1ページ目から真面目に取り組まないと……と難しく考える必要はありません。まずは音を真似することから始めてみてください。好きなコンテンツを使い、楽しみながら続けられる環境をつくることが、何よりも大切です。 【PROFILE】スンジュンさん 韓国・ソウル生まれ。京都大学総合人間学部卒業。中高までは韓国のインターナショナルスクールに通い、高校卒業後に文部科学省の国費留学生として来日。大学卒業後、リクルートを経て起業。 日本語能力試験N1満点、TOEIC満点、中国語能力試験HSK4級。YouTubeチャンネル「 スンジュン 韓国語は発音が9割 」を運営し、初心者や学習に挫折した人に向けて短期間で話せるようになる指導を行っている。 Related... TOEICの目標スコアはどう決める?英語を1年でマスター!孫正義氏の元秘書に聞く「年収アップを目指す効果的な勉強法」 ...クリックして全文を読む