イメージ写真 「あなたの町のインドカレー屋。ランチ900円、焼きたてのナン、いつも笑顔の店主。その店が、3年以内に消えるかもしれません。経営が苦しいからではありません。ビザのルールが変わったからです」 外国人店主らが大きな影響を受ける可能性がある省令改正に声を上げるオンライン署名は、そう呼びかける。 日本政府は、日本で事業を営む外国人のための在留資格「経営・管理」に関する省令を改正し、2025年10月に 施行 。厳格化された要件では、資本金を500万円から3000万円に大幅に引き上げた。 経営実態のないペーパーカンパニーを使った在留資格の不正取得を防ぐことを目的とした改正だったが、実際には地道に飲食店などを営んできた外国人に大きな影響が及ぼうとしている。 そのような事態を懸念した有志らがオンライン 署名 を立ち上げ、開始約1週間で1万筆を超えた。署名の発起人を取材した。 【あわせて読む】 街の強みは「多様性」。大久保の街で40年以上続く祭り、いま共に盛り上げるのは韓国やベトナムの人々 オンライン署名 「3年後、あなたの町から何軒の店が消えているか想像してみてください」 署名の発起人・鶴ヶ島たろうさんがこの省令改正について知ったのは、行きつけのインドカレー店のオーナーから相談を受けた時だった。 その後、同件に関しての報道などで世間でも話題になり、問題意識を持ち始めた。鶴ヶ島さんが長く飲食業で働いてきた経験からも、資本金が元来の500万円から6倍と大幅に引き上げられた影響の大きさが予想できたという。 「飲食店で資本金3000万円は、よほど大きなチェーン店でなければ不可能です。あまりに不当な省令改定です」(鶴ヶ島さん) Xなどで呼びかけ、集まった有志の仲間約50人と相談しながらオンライン署名活動を始めた。 鶴ヶ島さんは、「まず何が起きているのか、何が起きようとしているのかを知ってほしい。そして自分に何ができるかを考えて実行してほしいです」と話す。 「今のままでは再来年以降、街から食の多様性が失われます。食だけでなく、コスメやネイル、雑貨店、さまざまなビジネスが撤退します。日本中の地域経済や地域コミュニティにも大きな影響が出ます」 省令改正の影響は様々な業種に及ぶと予想されるが、今回はインド・ネパールカレーやベトナム料理などを愛する人たちが中心となって声を上げた形だ。Xでは「#推しエスニック料理といつまでも」のハッシュタグと共に、行きつけのレストランの写真が投稿されている。 また、改正の影響は外国人の経営者本人だけでなく、経営者の子どもなどの家族、店で働く外国人・日本人店員の雇用の問題にも及ぶ。 署名の説明欄では、以下のように呼びかけている。 「週に一度のカレーランチ。家族で行くベトナム料理。仕事帰りに寄るケバブ屋。帰り道にテイクアウトするタイ料理。それらの店の多くが、経営・管理ビザで営業しています。3年後、あなたの町から何軒の店が消えているか、想像してみてください」 「本来の対象であるペーパーカンパニーへの効果は限定的」 法務大臣や出入国在留管理庁長官に宛てられた署名では、主な要求として、事業実態のある既存事業者を一律の資本金基準で排除するのではなく、「営業実績・納税実績・雇用実績など事業の実態に基づく審査基準に転換」することを求めている。 省令改正の目的は、経営実態のないペーパーカンパニーを使った在留資格の不正取得を防ぐこととされており、署名でも「私たちは、制度の悪用を防ぐための適切な審査を否定しません」「ペーパーカンパニーを取り締まることには賛成します」としている。 その上で省令改正は「本来の対象であるペーパーカンパニーへの効果は限定的」だとし、以下のように指摘している。 「資金力のある層にとって3000万円は障壁になりません。つまり、ペーパーカンパニーを運営できるだけの資金力を持つ層はこの要件を簡単にクリアでき、日本で真面目に飲食店を営んできた小規模経営者だけが排除される——そういう構造になっています」 「事業実態を個別に確認すれば済む話を、一律3000万円という基準で切り捨てるのは、あまりにも乱暴です」 出入国在留管理庁は、現在、「経営・管理」の在留資格を持つ外国人に対しては、施行から3年後の2028年10月までは改定後の基準を満たしていない場合も、総合的に判断するという、いわゆる経過措置の期間を設けている。 署名では、この期間の延長、そして、この改正が外国人経営の飲食店数・雇用・地域経済にどのような影響を及ぼすかという、「定量的な影響評価の実施と結果の公表」を求めている。 「法に基づき真面目に働いてきた人たちを路頭に迷わせるようなことはやめて」 署名には、多くの人から省令改正に声を上げるコメントが寄せられている。 《ただただシンプルに、法に基づき真面目に働いてきた人たちを路頭に迷わせるようなことはやめてほしい。するべきではありません。こんな形で外国の人々を「排除」したところで、一体誰が得をするのでしょうか》 《日本で大変な思いをしながらも一生懸命働き、念願の店を持った外国人の友人がいます。彼らはここで生きて働いています。こんな理不尽かつ無駄なことをして彼らを苦しめることに大反対です》 現在もchange.orgで募集中の 署名 は、法務省などに提出することを予定している。 (取材・文=冨田すみれ子) Related... 街の強みは「多様性」。大久保の街で40年以上続く祭り、いま共に盛り上げるのは韓国やベトナムの人々 日本に年間30万人増えている外国人。ゴミの分別や交通ルール…どう「伝える」? 日本人と外国人が一緒に考えてつくった最適解 社員の7割が外国人の日本企業、事業は在日外国人の“困りごと”解消。「日本に来てよかった」を目指す理由 ...クリックして全文を読む