性被害者に警察官が「あなたにも落ち度」。刑事手続きでの二次加害、「改正刑法を蔑ろにしないで」と当事者ら訴え

(左から)記者会見に臨んだ田中嘉寿子さん、池田鮎美さんらアンケートチーム 大阪地検の元検事正からの性被害を訴えている 女性検事 の支援者たちでつくる「女性検事を支援する会」が、性犯罪被害者から見た捜査・裁判の問題点に関するアンケートを実施し、3月2日に東京都内で記者会見を開いて結果を報告した。 アンケート結果からは、被害届を出した後に警察官や検察官から性被害者を貶める発言をされるなど、刑事手続きにおける二次加害の実態が浮かび上がった。 「 自分から誘ったのでは?」警察や検察から侮辱発言 性犯罪に関する改正刑法は、2023年に施行された。改正法では、 性犯罪の本質的な要素を「同意しない意思を形成し、表明しもしくは全うすることが困難な状態」と 表現し 、従来の「暴行・脅迫」要件を見直して 不同意性交等罪・不同意わいせつ罪が創設された。 だが同会は、警察官、検察官、裁判官など法曹関係者が改正刑法の趣旨や被害者心理を十分に理解していないために、刑事手続きの中で被害者が再び傷つけられている現状があることを問題視した。また、性暴力事件で不当な不起訴処分も繰り返されているといい、捜査機関による二次加害の実態を明らかにする目的でアンケートを行ったという。 アンケートは、性被害の当事者らを対象に2025年10月〜12月、インターネット上で行い、有効回答数は603件だった。このうち、捜査機関に被害を申告した人は32%だった。アンケートチームはこの被害申告の割合について、あくまで今回のアンケートに回答した人の集計結果であることに留意するよう呼びかけている。 被害申告をした人のうち、警察の捜査・処分に満足していると回答した人は25%で、不満、違和感があると答えた人は63%だった。不満、違和感があると答えた人に理由を尋ねたところ、「担当者が、性暴力被害者の心理を理解していないように感じた」「警察の対応に、恐怖や不安、絶望を感じ、話したいことを話せなかった」の順で多かった。 警察の対応で傷ついたことを自由記述で尋ねる質問には、 「『このような被害に遭わないように、日ごろから気をつけなさい。あなたにも落ち度があった』と説教された」 「『知り合いなんでしょ』『なぜ被害当日に警察に来なかったのか』と性被害を疑問視された」 「『なぜ逃げなかったのか』と責められ絶望し、その先の質問には何も答えられなかった」 ━といった訴えが寄せられたという。 一方、検察の捜査・処分に満足していると回答した人は34%で、不満、違和感があると答えた人は54%だった。 検察の対応で傷ついたことでは、 「『あなたは体を使った取引をして取材をしていたのではないか?』と聞かれた」 「『自分から誘ったのでは?男を漁りに行ったんだろう』等の侮辱的なことを言われた」 「僕は男だからあなたの気持ちは分からないと言われた」 「被害後、仕事の報復が怖くてご機嫌取りのメールを送ってしまい、それが同意を補強するものだと検事が判断し不起訴にされた」 ━などの声が届いた。 被害者が希望することを複数回答で聞いたところ、 ▽警察官・検察官・裁判官が二次加害を行わないよう、適正に法を執行すること ▽被害者の心身の状態に配慮・支援し、処罰すべき性犯罪を適正に処罰すること ▽被害者心理や改正刑法の趣旨・要件などに関して、警察、検察庁、裁判所、弁護士会で全職員・会員に毎年の研修を義務付けること ━といった要望が上位を占めた。 アンケートチームのメンバーで、女性検事の代理人を務める田中嘉寿子弁護士は調査結果を踏まえて、「私たちが懸念していた通り、ひどい暴言の数々が現れた。ごく一部の例外的な捜査官がよくないのではなく、捜査機関全体に変わっていただく必要がある」と述べた。 女性検事「最後の砦である検察が被害者を踏みにじっている」 記者会見で発言するひかりさん。「いくら良い法律ができても、使う者がそこに気持ちも熱意もなければ、被害者は救われない。犯罪者は野放しになり再犯し、新たな被害者が生まれることにすごく心を痛めている」と述べ、性犯罪事件を軽視する検察の姿勢を批判した。 元検事正からの性被害を訴えている女性検事のひかりさん(仮名)は、「被害申告できる人は氷山の一角であり、ほとんどの被害者の方が泣き寝入りを強いられている。勇気を振り絞って助けを求めてきてくれているのに、被害者にとって最後の砦である検察がこのように被害者を踏みにじってるという現状が情けない」と訴えた。 2023年の改正刑法で、衆参両院の 附帯決議 には、「 捜査から公判等における各段階において被害者の心身の状態に十分配慮するよう努める」ことが明記された。 性被害当事者の池田鮎美さんは、「何度刑法が改正されても、刑事手続きで傷つくのであれば、被害者は被害申告ができません」「私たち被害者が命を削りながら作ったこの刑法を、蔑ろにしないでください。検察官は、(改正刑法について)分からないならば性被害に関する勉強をして、しっかり起訴をしてください」と涙ながらに訴えた。 同会は今後、アンケートの詳細を分析した後、結果を警察庁、最高検察庁、最高裁判所のほか、法務省や文科省など関連省庁に提出するという。 Related... 復興ボランティア団体代表に無罪判決。知人女性への不同意性交の罪に問われていた 前橋地裁 送別会で受けた性暴力。レイプドラッグ疑いも、警察官は半笑いで「記憶がないってありえるの?」 韓国で強まる性教育への「バックラッシュ」。ディープフェイクなどデジタル性犯罪が増える今だからこそ「包括的性教育」が重要なワケ ...クリックして全文を読む