ジブリの宮﨑駿監督、85歳で「絵の力、衰えずに進化」。新作映画の可能性を問われた鈴木敏夫Pは、どう答えた?

スタジオジブリの宮﨑駿監督が今取り込んでいるのが「パノラマボックス」の制作だ。 【画像】ハウルやトトロも!宮﨑駿監督が新たに描き下ろしたパノラマボックス パノラマボックスとは、宮﨑監督が自ら描き下ろした絵を、箱の中で立体的に組み合わせて展示するもの。「風の谷のナウシカ」から「君たちはどう生きるか」までの長編アニメや短編アニメをもとに、作品にあるシーンを描いたもの、新たにイメージして描いたもの、そして完全オリジナルの新作も3点ある。 その数は計31点にも及び、7月8日より愛知県長久手市にあるジブリパークの「ジブリの大倉庫」で公開される。 3月17日に都内のスタジオジブリで取材会が行われ、宮崎吾朗監督と鈴木敏夫プロデューサーが登壇。制作の裏話や、宮﨑駿監督の近況、今後の作品作りについて明かした。 宮﨑駿監督制作のパノラマボックス。作品名は<魔女の宅急便/オーイあぶないよ> 「カメラを上下に動かしたような絵を作っているのが宮﨑駿的」 宮﨑駿監督は取材会には不参加で、鈴木さんははじめに「本来なら宮﨑駿がここにいるべきなんですよ!」と一言。宮﨑監督からは「俺は出ない。吾朗がやればいい」と言われたというが、「本人ものぞきたいと思っているので、内緒で顔を出すかも」と話していた。 宮﨑監督発案の「パノラマボックス」とは、キャラクターや背景画などを別々に描いて箱の中に何層にも分けて配置し、のぞき込むと、映画のワンシーンのような奥行きのある風景が広がって見える、仕掛け絵のようなもの。2023年公開の映画「君たちはどう生きるか」の制作終盤から、着手していたという。 アイデアの源は、宮﨑監督自身が子どもの頃に夢中になって作っていた、キャラメルお菓子のおまけでついていた紙細工。材料は紙と鉛筆と絵の具とペンで、吾朗さんは、「人にやらせたものではだめなので。父にとっては紙が一番慣れ親しんだ材料で、絵の切り抜きにもハサミを使っていました。5歳の子どもに戻って、好きだったものを自由に描いている」と説明した。 宮崎吾朗監督 美術の吉田昇さん、制作補佐の高屋法子さんが関わっているものの、設計図があるわけではなく、宮﨑監督自身がラフなレイアウトをもとに制作していったという。 鈴木さんは、「縦の構図を多用しており、俯瞰・煽りなどカメラを上下に動かしたような絵を作っているのが宮﨑駿的」だと分析。1997年に「もののけ姫」が公開されたあと、映画のキャンペーンで渡米し、ニューヨーク近代美術館(MoMA)で「ダリの部屋」のような展示を見たという。そこに今のパノラマボックスに通ずる展示物があり、宮﨑監督はそれを熱心に観察していたと振り返った。 実際に、パノラマボックスを見た感想については、「僕と宮さんは7歳年が違いますが、おもちゃがない時代に育ったので、自分たちで作るのが基本でした。真剣に木を折って刀や弓矢を作って、出来のよさを競うという遊び方。それが今も残っていて、楽しいことを突き詰めて、できる範囲でやっちゃう。そういうことだと思います」と述べた。 「宮さんは映画を作りたがっている。何が起こるかわからないのが世の中」 今年1月に85歳になった宮﨑監督について、鈴木さんは、「反射神経が鋭くなっていて、まだまだ現役なんですよ」と話す。 「宮さんは、俺はがんばってると強くアピールしてくる。話の節々に、映画を作りたがっているのが出ています。映画作りに意欲を表している日と、そうじゃない日もある。その繰り返し。この間言われたんですよ。『鈴木さん、俺たちはいい時代を過ごしたんだよ。いい映画を見て、それに刺激を受けながら、好きなように作ることができた』と(笑)」 鈴木敏夫プロデューサー 滅多にメディアに登場しない宮﨑監督の近況について明かされると、記者からは「それは何かの匂わせなのでしょうか…?」との質問もあった。笑顔を見せた鈴木さんは、率直にこう明かした。 「宮さんは映画の企画を話すんです。でも体調や天候によって違う。歳をとるというのは、そういうこと。僕はいいところでやめたほうがいいじゃないかと思っているんですけど…何が起こるかわからないのが世の中だから。宮さんが長生きすることははっきりしているが、どうなるかはわからないですね」 鈴木さんは、パノラマボックス作りに取り組む宮﨑監督を見て、「絵の力がまったく衰えてない。さらに進化している」と実感したという。「宮さんは人の作ったものに興味がない。吾朗くんが作ってきたジブリパークで、吾朗くんより自分が前に出ようとしている。人に負けない、自分が面白いものを作って世間にどうだと見せる。それが原動力の人ですから」と、およそ50年隣で見てきた宮﨑監督の創作の源泉を明かした。 三鷹の森ジブリ美術館の総合デザイン、ジブリパークの企画責任者を務める吾朗さんは、監督としては2021年公開の「劇場版 アーヤと魔女」が劇場映画の最新作となる。自身の映画の企画について問われると「短いものは今…。でも黙っておきます。ないということはないです」とコメントした。 パノラマボックス31点の中の数点は、今も7月のジブリパークでの展示に向けて制作中という。その後の宮﨑監督の仕事について、吾朗さんは「パノラマボックスのもっと大きい、訳のわからないものを作ってる。タイトルは『これはなんだ』とつけていた。ジブリ美術館に展示して『これはなんだ』展をやると言ってました」とし、尽きることのないアイデアがあることを明かした。 <君たちはどう生きるか/インコ帝国> 都内のジブリスタジオの敷地内には、スタッフの子らが通う保育園がある。取材会に先駆け、子どもたちにパノラマボックスを披露すると、反応がよく、宮﨑監督は「子どものためのジブリが帰ってきた」と喜び、吾朗さんと握手を交わしたそう。パノラマボックスの高さは子どもの目線にあわせて作ったといい、吾朗さんは来場者にも「しゃがんで、子ども目線の風景を楽しんでほしい」と呼びかけた。 (取材・文=若田悠希/ハフポスト日本版) 関連記事 【画像集】宮﨑駿描き下ろしのパノラマボックス ジブリ映画「魔女の宅急便」の北米IMAX版ポスターが「日本と雰囲気違う」「おしゃれ」と話題。日本版と比べると? ...クリックして全文を読む