ハフポスト日本版
解雇された元国土安全保障長官ノーム氏(左)と元司法長官ボンディ氏(右) トランプ政権で、要職に就いていた女性閣僚の解雇が相次いでいる。 4月2日、司法長官の パム・ボンディ氏 は、エプスタイン関連の対応にトランプ氏が不満を募らせたとされ、職を追われた。 数週間前には、国土安全保障長官のクリスティ・ノーム氏が突如解雇されたばかりだった。トランプ氏はSNSで解任を発表し、後任に共和党のマークウェイン・マリン上院議員を指名した。 ボンディ氏とノーム氏はいずれも在任中、激しい批判を浴びていた。ノーム氏は厳しい移民取り締まり政策を主導し、各地で批判を浴びた。一方、ボンディ氏もエプスタイン関連文書の扱いをめぐり、トランプ氏を守るために被害者を見捨てたとの批判を受けていた。 トランプ氏の1期目は閣僚の入れ替わりが激しかったが、2期目では比較的安定している。それだけに、これまで解任されたトップレベルの閣僚がいずれも女性であることに、多くの人が注目している。 「無能」であることにジェンダーは関係ないが、解任されたのは女性ばかりだ。 ノーム氏の解雇に対して、あるポッドキャストホストは SNS に 「家父長制のために最も尽くした女性こそ、最初に見捨てられ、渇きの中で沈んでいく」 と投稿。ある 保守系コメンテーター は 「ボンディはひどかったが、パテルより悪いわけではない。ノームもひどかったが、ヘグセスより悪いわけではない。それなのに解任されるのは女性だけとは、なんとも皮肉だ」 とコメントした。 FBI長官のカシュ・パテル氏は、トランプ氏への強い忠誠心で知られる人物だが、昨年就任して以降、その職にふさわしくないとの批判に絶えずさらされてきた。 ピート・ヘグセス国防長官についても、アメリカ主導のイランでの軍事衝突を指揮するには力量不足だと批判する声が上がっている。 パテル氏(左)とヘグセス氏(右)「ボンディはひどかったが、パテルより悪いわけではない。ノームもひどかったが、ヘグセスより悪いわけではない」との声も オクシデンタル大学ジェンダー学教授の キャロライン・ヘルドマン氏 は、これは 「ジェンダーによる使い捨て(gendered expendability)」 の典型例だと指摘する。 「女性のリーダーは本質的に“代替可能”と見なされやすい。リーダー像に関するジェンダー観のせいで、女性は男性ほど“適任”だと見なされないからです」 と語る。 権力の座にある女性は、強すぎても弱すぎても批判され、極端でも消極的でも非難される。一方で男性は大目に見られやすい。つまり、女性はより高い基準を満たすことを常に求められているのだ。 政権内の他の女性たちにとっても、不安材料はある。3月末の記者会見でトランプ大統領は、報道官のキャロライン・レビット氏について 「ひどい仕事ぶりだ」 と冗談を言い、「このまま続けさせるべきかな?」と本人の前で皮肉を口にした。 また 英紙ガーディアン は、トランプ氏が国家情報長官のトゥルシー・ギャバード氏の交代を検討していると報じた。報道によると、トランプ氏は他の閣僚に非公式に意見を求めているが、後任についての具体的な議論にはまだ至っていないという。 ノーム氏とボンディ氏が直面した「ガラスの崖」 テキサス大学オースティン校の政治学教授ゼイネップ・ソマー-トプチュ氏は、女性が頻繁に直面するこの「ガラスの崖」現象を、トランプ政権は“ドラマのように分かりやすく描いた典型例”だと指摘する。 「『ガラスの崖』とは、女性がより困難でリスクの高い状況でリーダー職に就かされやすく、その結果、うまくいかなかった場合に責任を負わされやすいという考え方です」 とソマー-トプチュ氏は説明する。 「あるリーダーは堅固な地盤の上に立っている一方で、別のリーダーは流砂の上に立っている。女性リーダーの場合、同程度かそれ以上の問題が男性に許容される場合でも、支持がはるかに早く失われる傾向があります。より厳しく監視され、正当性も当初から脆弱なのです」 民主党系ストラテジストのマックス・バーンズ氏は米ニュースメディア MS NOW のオピニオン記事で、 「共和党の強固な支持基盤でトランプ氏の支持率が過去最低を記録したタイミングで、ノーム氏とボンディ氏が退場したのは偶然ではない」 と指摘した十分。 トランプ氏(左)、ボンディ氏(真ん中)、ノーム氏(右) ジェンダーが解任の唯一の要因である可能性は低い。ノーム氏とボンディ氏はいずれも米国民の間で非常に不人気だった。しかし、責任がどれだけ早く押し付けられるか、またリーダーがどれほど「代替可能」と見なされるかには、ジェンダーが影響している可能性が高いとソマー-トプチュ氏は指摘する。 ミドルベリー大学のジェンダー研究教授で、ポッドキャスト 「Feminism, Fascism & the Future」 のクリエイターでもあるローリー・エシグ氏は、ノーム氏とボンディ氏がトランプ氏に極めて忠実だったにもかかわらず、真っ先に解任されたことに驚きはないと話す。これはトランプ氏およびその支持運動が持つ女性軽視の姿勢を示しているという。 2期目のトランプ大統領は、自身も複数の女性から性的暴行やレイプで 告発 されているが、 同様の不祥事疑惑を抱える男性たちを閣僚に起用 している。例えばヘグセス氏は、2017年に女性を レイプした疑いで調査を受けていた 人物だ。 「この動きは女性、あるいは“女性的”とされる存在を重視していません。そして同時に、女性を罪深く、完全な人間性や市民権に値しないとみなす特定の宗教的価値観の影響も強く受けています」 とエシグ氏は語る。 「家父長制との取引」をしても... トランプ政権のような男性中心の構造では、権力者である男性に従う女性はキャリア上昇の機会を得られる可能性があるが、それにも限界がある。 「これはフェミニズム理論でいう“家父長制との取引”の典型例です。女性が家父長制的な男性や制度に同調することで、地位の向上を得ようとする構図です」 とヘルドマン氏は説明する。 こうした女性たちは、従うことで安定や見返りが得られると考えるが、実際にはその関係の中で大きな力を持つことはできない。ノーム氏はその顕著な例だという。 「彼女はサウスダコタ州で 生殖に関する権利を制限 し、女性を公然と軽視するトランプ氏のために攻撃的な姿勢を取り、自身のイメージを彼の承認に合わせて作り替えてきました。それでも彼女は解任されたのです」 とヘルドマン氏は語る。 一方でボンディ氏も、トランプ氏にどれほど忠誠を示し、 議会で民主党議員を激しく攻撃 しても、それだけでは十分ではないととらえられたようだ。 女性の「登用」だけではフェミニズムではない 最終的にヘルドマン氏は、今回の2人の解任が 「リーン・イン・フェミニズム(女性が組織の中で重役になって発信力を持つことで、女性の地位を向上させようという考え方)」 の限界を示していると指摘する。 権力の座に女性がいること自体は、それだけでフェミニズムの成果とは言えない。特に、その女性たちが他の女性の権利や自律性を損なう役割を担っている場合はなおさらだという。 「ノーム氏とボンディ氏は、女性の進歩の象徴ではありませんでした。むしろ、家父長制が女性の存在を利用して正当性を装いながら、実際の権力構造は男性が維持する、その仕組みを象徴していたのです」 ハフポストUS版 の記事を翻訳・編集しました。 Related... アメリカで人気急増中の「プロテイン系」おやつに懸念の声。日本ではおつまみとして人気 「ママ友」グループチャットのサバイバル術。マウントやパニックが混在するスペースで上手くやり抜くには 海外有名カルチャー誌、新田真剣佑のインタビューをAI生成し物議。「何これ?」「ジャーナリズムの死」 ...クリックして全文を読む
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