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国会前デモと、ハンガリー16年ぶりの政権交代にひとつのトレンドの終了を感じ、世界や日本の右派に与える影響を考えた | Collector
国会前デモと、ハンガリー16年ぶりの政権交代にひとつのトレンドの終了を感じ、世界や日本の右派に与える影響を考えた
ハフポスト日本版

国会前デモと、ハンガリー16年ぶりの政権交代にひとつのトレンドの終了を感じ、世界や日本の右派に与える影響を考えた

2026年4月8日、国会議事堂(衆議院)の向かい側でデモが行われた 4月8日夜、国会前は色とりどりのペンライトの灯りに埋め尽くされていた。 この日開催されたのは、「WE WANT OUR FUTURE」と「憲法9条を壊すな! 実行委員会」による「平和憲法を守るための緊急アクション」。 2月27日から開催され、3月10日には約8600人、3月25日には約2万4000人が集結したというこのアクション、4回目となるこの日に集まったのは約3万人。国会周辺は光の海と化していた。 それだけではない。北海道から沖縄まで、全国130カ所以上で同様のアクションが行われたのだという。いったい、どれほどの人がこの日この時間、「戦争反対」の声を上げたのだろう。 アメリカ、イスラエルによるイラン攻撃が始まってから、すでに1カ月以上。多くの命が理不尽に奪われ、またホルムズ海峡封鎖によって世界経済も大打撃を受けている。物価高騰が4年以上にわたって続く日本でも、ガソリン代の高騰をはじめとして、生活のあらゆる場面に影響が出ている。 デモが行われた日は、奇しくもトランプ大統領がイランとの停戦合意を発表した日。しかしその前日、トランプ大統領は記者会見で、NATOのみならず日本、韓国、オーストラリアを「助けてくれなかった」と名指しで批判。また、同日の会見では停戦に向けた交渉期限を強調し、「期限を過ぎればイランは石器時代に戻る」「一晩で国全体を壊滅させることができる」などと発言している。 そんな身勝手な人間が始めた戦争に、世界中で怒りが渦巻いている。 戦場でなくとも無関係ではいられない。特にナフサ不足は生活だけでなく、医療現場に大きな脅威を与えている。中でも心配なのは人工透析が必要な人たちだ。週に数回の人工透析がナフサ不足でできないとなれば、それは「死」を意味する。 ということでこの日、初めて「平和憲法を守るための緊急アクション」に参加した。 開始の19時半よりだいぶ前に着いたものの、すでに国会周辺にはペンライトを手にした大勢の人たち。プラカードに踊るのは、「自衛隊員の命 アメリカに差し出すな」「せんそうはんたいなので憲法まもる」「REVOLUTION NUMBER NINE」「アメリカの戦争手伝うために9条壊すな」などの言葉たち。 ステージはふたつに分かれており、私は「WE WANT OUR FUTURE」が担当する方にいたのだが、開始時間になると同時に、まずはこのグループについての説明がなされた。 活動をスタートさせたのは2022年。20〜40代の会社員、自営業、団体職員、若手研究者、アーティスト、フリーランスなど有志の緩やかなつながりからなるとのこと。これまで国会正門前や首相官邸前にて自民党の裏金問題に対する抗議集会、渋谷・新宿で気候危機や戦争反対を訴えるデモ、高市首相による台湾有事発言撤回を求めるアクション、政治を学ぶ勉強会やポッドキャストなどさまざまな活動をしてきたという。 説明を聞いて、一人、胸を熱くしていた。 自分より下の世代の人々が、こうして地道な活動を続けてきたことを、恥ずかしながら私はほとんど知らなかった。特に自民党の裏金問題については、刑事告発の記者会見に参加してきたものの、若い世代も抗議していたなんて、この日初めて知ったのだった。 だけど、思えばこの10年ほど、あらゆる現場で若い世代の姿は当たり前にあり、増えていることは感じていたのだ。それはガザ虐殺への抗議アクションや反ヘイトの場だったり、学費値上げ反対や気候変動デモなどでだった。イシューによっては見事なほどに若い世代しかいない、という光景も幾度か目にしてきた。 今、国会前のデモに「若い女性が多い」ことがやたらと強調され、まるで「突然変異」のように報じられている。が、ずーっと前から地殻変動は起きていた。それが大規模デモという場で可視化されたのがたまたま今回だったのだろう。そしてそれを、この国の「男社会」がことさらに「事件」としているのだろう。ちなみに参加者全体を私が見た限りでは、本当に「老若男女」としか言いようのない、あらゆる世代がいた。 そうしてコールが始まり、次々と登壇者がスピーチする。どの人のスピーチにも聞き入ったが、驚いたのはこの日の「音」だ。コールに合わせてDJがその場でプレイするのだが、これまで多くのサウンドデモに参加してきた身からしても、ぶっちぎりのダントツで音がとにかくすごかった。コールとの絡みも絶妙で、なんというか、いにしえのバンギャの最高の褒め言葉、「重低音がバクチクする」を捧げたいほどだ(知らない若い世代は親や親戚に聞こう)。DJの人々の職人技に、とにかく驚愕したのだった。そうしてあっという間に終わりの時間も近づいた頃、全体像を見たくてデモ隊から離れた。 するとこれから参加する人たちとすれ違う形になったのだが、前から歩いてきた人たちがほぼ全員、「え、なんなの?」「スゴイ!」と歓声を上げる。その声に今いた場所を振り返ると、そこにあったのは、息を呑むほどの光の洪水だった。 赤やピンク、緑、青、紫などなど無数のペンライトが暗闇の中で揺れている。それが列になってずーっと続く光景は初めて目にするもので、その光一つひとつに込められた思いを想像すると、なんだか胸が熱くなったのだった。 さて、そんなデモの様子が参加者たちによってSNSにアップされると、やはりそれにはさまざまなコメントがつく。肯定的なものも多いが、当然、冷笑系も多い。 典型的なのが「ペンライト振って戦争止められるなら楽だよな」的なもの。 そういう言葉を見ると、慣れていても少し、心がざらつく。 が、自分のSNSの発信に限って言えば、否定的な反応は驚くほどに少なかった。デモに行ったという写真つきのポストは5万インプレッションくらいになったのに、冷笑系、嘲笑系がほぼなくて拍子抜けしたほどだったのだ。 それほどに、今回のイラン攻撃の道理のなさに多くの人がドン引きしているのだろう。 そんな中でもわざわざ「デモなんて意味がない」と反応すること自体、現在の世界情勢に並々ならぬ関心があることの証拠だとも思う。本気で無関心な人は、SNSなどで目にしても無意識にスルーしてどこにもひっかからないからだ。 だけどわざわざ立ち止まり、コメントまでするということは、思うところがあるのだろう。何かしなければ、という気持ちもあるのかもしれない。しかし、盛り上がっているというデモになんの意味があるのかという葛藤もある。攻撃の標的となった場所では人が死んでいるのに、「何か楽しそうで不謹慎」という違和感を抱く人もいるかもしれない。 一方、デモに来たくとも物理的に、平日夜に国会前をはじめとして全国各地のそんな場に来られない人もたくさんいる。というかそういう人の方が、圧倒的に多数派だ。 そんな中、「こんなやり方じゃ戦争など止められない」とコメントすること自体、その人にとってはひとつの大きなアクションかもしれないとも思う。否定的な反応に思えても、方向性は、決して違わない気がするのだ。そんな反応を引き出せたこと自体、デモの効果なのだろう。 デモがよくある東京に住んでいて、平日夜にも出歩ける独り身の私には、きっと見えないものがたくさんある。気づいていないことも。だからこそ、来られない人や「デモなんて」という人の気持ちをこれからはもっと想像してみたいと思ったのだった。 そんなデモが開催された翌日、イスラエルは「停戦合意に含まれていない」として、レバノンを攻撃。この攻撃で254人が亡くなったと報じられている。それを知って、ただただ、やるせない気持ちが込み上げた。 さて、国会前デモから4日後の4月12日には、以前から非常に注目していたある選挙の結果が出た。 それはハンガリーの総選挙。なんとこの選挙で「欧州のミニトランプ」と呼ばれたオルバン首相が敗北し、16年ぶりの政権交代となったのだ。 オルバン氏は「自国第一主義」を掲げ、自らを「反グローバリスト」と呼び、リベラル嫌いを公言し、LGBTQへの厳しい姿勢で知られる人物だ。そんな人物が16年間も政権の座につき続けた背景には、外国人比率1.3%と日本より外国人が少ないにもかかわらず、移民の脅威を煽り続けたことがある。 例えばスキャンダルに見舞われ支持率が低下した14年には「新たな敵」に「アフリカや中東などのイスラム系移民」を設定(それまでは主にEUなどだった)。 そうしてやったことは、「テロと移民に関する意識調査」の一環として、「欧州委員会の移民政策の失敗とテロとの増加には関連性があるという意見があります。あなたはこの意見に同意しますか」というアンケートをすべての有権者に郵送すること。 同時に、「ハンガリーに来てもハンガリー人の仕事を盗んではいけない」「ハンガリーに来たら、われわれの文化を尊重する義務がある」という移民に向けたポスターキャンペーンを実施。しかし、表記はすべてハンガリー語。ハンガリー人の不安を煽る目的であることは明白だ。 一方、15年の難民危機の際には国境沿いに175キロの障壁を作る法案を2時間で議会に承認させ、ブタペストの駅も封鎖。 しかし、EU各国で難民を分配して受け入れることになり、ハンガリーも1000人以上引き受けることになった際には、以下のような内容のポスターが全土に貼られた。 「パリ同時多発テロは移民の仕業」「移民の流入により婦女暴行が急増」 〈以上、『 ポピュリズムの仕掛け人 』(ジュリアーノ・ダ・エンポリ)より〉 このように、移民問題を「金の鉱脈」としたオルバン氏は欧米の右派から熱い支持を受け、トランプ大統領とは「盟友」と言われるほどの仲。実際、今回の選挙戦でトランプ大統領は、有権者がオルバン氏を支持すれば、アメリカの「経済力のすべて」をハンガリーに投入する用意があると述べ、またバンス副大統領はオルバン氏応援のため、わざわざハンガリーを訪れている。 そんなハンガリーで起きた、政権交代。勝利したのは46歳の党首が率いる新興野党の「ティサ(尊重と自由)」で、オルバン政権を痛烈に批判していた。 オルバン氏のやり口について詳しく知りたいという人は去年7月に書いた「 参政党の大躍進と、それを『予言』するような各国の『移民排斥』の動き 」を読んでほしい。 それにしても「自国第一主義」といい、「反グローバリスト」といい、移民への敵視やLGBTQへの厳しい視線などといい、何かに似ていないだろうか。 そう、それは「違法外国人ゼロ」を掲げる自民党や高市政権であり、「日本人ファースト」を掲げ、反グローバリズムを謳い、外国人受け入れに消極的でLGBTQを否定するような発言を厭わない参政党である。 このようなスタンスが世界のトレンドのひとつであったわけだが、今回の政権交代は、その賞味期限切れが近づいていることを示しているのではないか。 ということで、今後の展開、ハチャメチャに大注目、である。 (2026年4月15日の雨宮処凛がゆく!掲載記事『 第757回:国会前デモと、ハンガリー16年ぶりの政権交代にひとつのトレンドの終了を感じ、世界や日本の右派に与える影響を考えた。の巻(雨宮処凛) 』より転載) 【あわせて読みたい】 参政党の「大躍進」と、それを「予言」するような各国の「移民排斥」の動き Related... 日米首脳会談で機能した憲法と最後の原油タンカー、そして高市首相の振る舞いなど全部乗せ 排外的な空気に乗っかる入管難民法改正案と、18〜25年のものと比較して今年から突然「喧嘩腰」の「総合的対応策」について 「ママ戦争止めてくるわ」と『新しいリベラル』と、特殊な界隈で特殊な訓練を長期間受けてきたという自覚について ...クリックして全文を読む

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