ハフポスト日本版
日本で暮らす外国人が、子どもの入学式や卒業式で撮影した家族写真をSNS「Threads(スレッズ)」に投稿し、リプライ欄にヘイトスピーチが殺到するケースが相次いでいる。 ハフポスト日本版編集部が4月21日までに確認しただけでも、50を超える一般外国人ユーザーによる投稿に差別発言などが確認された。 排外主義的な言葉の他、イスラム教徒を差別する内容の書き込みも多く見受けられた。 ヘイトスピーチの攻撃を受けた当事者、Threadsの運営会社であるMeta、弁護士に取材し見えたのは、「法整備」や「ヘイトスピーチ対策の第三者公的機関の設置」などの必要性だった。 (注:発生している事象について伝えるため、この記事には差別表現が含まれます) Threadsに投稿された入学式などでの家族写真。外国人やイスラム教徒を攻撃するヘイトスピーチが殺到した。(ぼかし加工をした上で、投稿者の了承を得て掲載しています) 幼稚園の入園式から大学卒業式まで。記念写真にヘイトスピーチが殺到 Threads上では、卒業式や入学式のシーズンである3月から4月にかけて、一般外国人ユーザーの投稿に、「害国人(外国人)は国へ帰れ」「ゴキブリは消えろ」「蔓延るなら駆逐する」「死ね」といった悪質なリプライが殺到した。 ヘイトの標的となったのは、子どもの幼稚園や小中学校での入学式や卒業式の家族写真、外国人留学生の卒業記念写真などだった。 ハフポスト編集部が約50の投稿について確認や取材をすると、被害に遭ったユーザーの多くは、東南アジアや南アジアの出身だと分かった。 子どもの成長と門出を祝い、記念に写真を投稿しただけなのに、「あまりのヘイトコメントの酷さに驚き、投稿を消した」と報告するユーザーも複数いた。 イスラム教徒に対しての攻撃的なリプライも多くあり、「おばはん、日本ではその鬱陶しい被りもん取れ!帰れ!」「ヒジャブを脱げ」「イスラム教いらない」などと、宗教やヒジャブの着用を攻撃するリプライも多く見られた。 一方で、ヘイトスピーチが殺到する状況に心を痛め、反論したり、代わりに謝罪したりする以下のような声も多く寄せられた。 「コメント、あまりにも酷すぎます。 これは完全に差別だと思います。見ていてとても悲しくなりました。そしてこういう言葉が当たり前になってしまうのは怖い」 「外国人っていう理由でむやみやたらに攻撃してる人は本当に恥ずかしい」 「お子さまのハレの日に差別発言する人がいて、ごめんなさい。 入学おめでとうございます。 異国での生活、大変なこともあるかもしれませんが、頑張ってください」 「家族の大切な瞬間を共有しただけなのに」「このような言葉が簡単に発信されてしまう現状に不安」 子どもの入学式での家族写真を投稿したインドネシア人女性は、ハフポスト日本版の取材に「家族の大切な瞬間を共有しただけなのに、その投稿に対して心ない言葉が向けられたことにショックを受けました」と話した。 「正直とても悲しく、驚きました。同時に、このような言葉が簡単に発信されてしまう現状にも不安を感じています」 女性がヒジャブを身につけていたことやイスラム教徒であることを批判する内容のリプライも殺到した。 女性は、「正直に申し上げてとても悲しく感じています」とし、こう話した。 「ヒジャブは自分自身の信念やアイデンティティを表す大切なものです。単なる服装ではなく、自分らしさや価値観を大切にするための一部でもあります。様々な考え方があることは理解しておりますが、お互いの違いを尊重し合いながら共に過ごせる社会であってほしいと願っています」 イメージ 女性は、日本で働く夫に帯同して8年前に来日した。これまでの日本生活の中では「多くの方々の優しさや思いやりにも触れてきた」といい、2600件超のリプライにはあたたかい言葉もたくさんあった。だからこそ「一部の心ないコメントだけで全てを判断してほしくないという思いもある」とし、こう語った。 「今回のことを通じて、文化や背景の違いを尊重し合い、安心して自分らしくいられる社会になってほしいと強く感じました。 Metaにはヘイトスピーチに対して、より迅速かつ適切な対応を強化していただきたいと思います。例えば、明らかな差別的発言に対する非表示対応の厳格化や、繰り返し行うユーザーへの対処などです。安心して利用できる環境が整うことで、多様な人々が安心して発信できる場になることを願っています」 入園式の写真に攻撃、「あまりの数のヘイトコメントに驚いた」。Metaに対策求める声 イメージ ヘイトスピーチは、国際結婚をしている日本人の投稿にも及んでいる。 ケニア人の夫と出席した、子どもの幼稚園入園式での家族写真を投稿したyurioさんは取材に対し、「あまりの数のヘイトコメントに驚いた」と話す。 「ヘイトコメントに対し戦ってくれる友人もいました。皆、私と同じく嫌な気持ちを抱えていました。 昨今の排外主義の傾向で色々なところで差別発言を目にし、実際に家族で外を歩いていると嫌な視線を感じることもあります。いつかは自分のSNSにもこんな反応がくるかもしれないと思っていました」 個人的な家族写真の投稿だったが、在留資格について問うような声に対し、夫がかつてスポーツ選手として来日したという経緯や、子どものヘアスタイル・ブレイズなどについても説明せざるを得なくなった。 ヘイトスピーチが寄せられたことについては、「わざわざ嫌な言葉を目にしてほしくない」と夫には話さなかったという。 metaに対しては「人を傷付ける投稿やコメントをするユーザーは即時にアカウントの凍結を願いたい」と話した。 「一線超えている。物理的な暴力にも繋がり、危険な状態」と専門家 オンライン上のヘイトスピーチに詳しい、弁護士で外国人人権法連絡会・事務局長の師岡康子さんは「外国人に対して『攻撃してもいい』という雰囲気が広がってしまっている。一線を超えている。物理的な暴力にも繋がり、非常に危険な状態」と警鐘を鳴らす。 師岡さんはハフポストの取材に、十数年前から大きな社会問題となった在日コリアンや中国人らに対するヘイトスピーチのターゲットが、過去数年はクルド人に広がり、さらには「外国人全体に対して広がってしまってる」と指摘する。 ヘイトの対象が拡大した背景には、難民申請がさらに困難になるという「改悪」がされた2023年の入管法改正や、「不法滞在者ゼロプラン」(2025年)などがあると分析。 さらにイスラム教徒へのヘイトも激化しており、「ネット上の攻撃にとどまらず、物理的なヘイトクライムやモスク建設の反対運動も起きていて非常に危険」とする。 弁護士の師岡康子さん(資料写真) SNS運営会社はどのように対応し、法的な観点からはどのように防ぎ、対応していくことができるのか。 今回、外国人ユーザーによる卒業式・入学式の投稿についた悪質なリプライについては「明らかに現行法でも違法で、侮辱罪などで犯罪にもなるような内容」と指摘。一方で、SNS上でのヘイトスピーチの被害は、情報開示請求や裁判などには時間もお金もかかり、必ず特定できる保障はないために「多くの人は泣き寝入りしてしまっている状態」だと話した。 「2016年に施行されたヘイトスピーチ解消法には、ヘイトスピーチは許されないとは書いてありますが、差別であって違法だとは明記されていません。同法の抜本的な改正などで具体的に『このような発言はヘイトスピーチであり違法だ』と明記することや、法的な規制が必要です。 また、第三者的な公的専門機関を置いて、ヘイトスピーチの違法性について判断し、削除要請や発信者情報開示要請をできるようにすれば、権力による恣意的運用を防ぎ、かつ、 被害者の負担を軽減することができます。本来、人種差別撤廃条約では国や自治体がヘイトスピーチを禁止し、止めなければいけないのに、プロバイダー(SNS運営会社)に丸投げしている点も問題です」 弁護士や研究者らがつくる「ネットと人権法研究会」は2023年、プロバイダーやプラットフォームがヘイトスピーチの削除基準を作成・改訂する際に参考にできる「 オンラインヘイトスピーチガイドライン 」を公開。師岡さんも作成に携わった。 ガイドラインによると、Threadsで散見される外国人やイスラム教徒を排斥・侮辱するリプライは「迅速に削除すべきもの」に該当している。師岡さんは「このようなガイドラインを法務省が出せば実効性がある」とも指摘した。 イメージ 外国人ユーザーによる卒業式や入学式の写真へのヘイトスピーチは、Instagramでも見受けられたが、攻撃的なリプライが集中したのはThreadsだった。 その背景には、Xなどと同様、投稿がタイムラインに自動的に表示されるというThreadsの仕様がありそうだ。 公開アカウントである限り、投稿した文章や写真は、フォローされているユーザーだけでなく、不特定多数に触れることになるからだ。 表示される投稿にはアルゴリズムも関係しており、例えば筆者がこの記事の取材のために外国人による卒業式・入学式の投稿を見ていると、タイムラインには類似の投稿が連続して表示されるようになった。 ヘイトスピーチを書き込んだユーザーに対しても、アルゴリズムにより類似した投稿が表示され、負の連鎖が発生したと見られる。 実際にリプライ欄には「なぜ最近、外国人の入学式の写真ばかりが表示されるのか」「多くないか」という旨の声も散見された。 また、設定によってはInstagramのフィードに投稿した写真と文章がそのままThreadsにも投稿されるため、意図せず個人的な家族写真がそのままThreadsにも転載投稿されたというケースもあった。 ヘイトスピーチへの規制と対応は。Metaの回答 イメージ ハフポスト編集部は、Threadsの運営会社であるMetaにも取材をした。 一連の在日外国人ユーザーによる3〜4月の卒業式・入学式の投稿へのヘイトスピーチについて把握していたかという質問に対しては、「個別の投稿やコメントに関する確認・対応状況についてはお答えを差し控えます」と回答。 一方で、「Metaにとって、利用者が安全かつ安心してサービスを利用できる環境を整えることは最優先事項のひとつ」「Facebook、Instagram、またはThreadsでは悪意のある行為を許容しません」とし、差別・誹謗中傷対策については以下のように説明した。 「Metaが提供するプラットフォーム(Facebook、Instagram、MessengerおよびThreads)において、コミュニティ規定を設けており、ヘイト行為、差別的表現、いじめと嫌がらせを含む問題のあるコンテンツに対して『削除、抑制、情報提供』という多層的な対策を講じています。 このポリシーに則り、違反するコンテンツを削除し、ポリシーには違反していないものの問題のあるコンテンツの拡散を抑制しています。また、コンテンツが不適切であったり誤解や混乱を招いたりする可能性がある場合、警告を表示するなど、利用者の皆様に対して、クリック、閲覧またはシェアをするコンテンツを判断するための追加情報を提供しています」 実際、リプライ欄の一部には、「一部の追加の返信は表示されません」「不快、誤解を招く、またはスパムの可能性がある返信が非表示になりました」と表示されるものもある。 この対応については、「Threadsでは自分の投稿に対する返信のうち、不快、誤解を招く、またはスパムとみなされる可能性のある一般的な単語・フレーズ・絵文字を含むものは自動的に非表示となります。この設定はデフォルトでオンになっています」とした。 Metaはこう説明する一方で、実際には投稿主や他のユーザーに多くのヘイトスピーチが一定期間、見えていたことから、差別発言などのリプライの削除や非表示対応が間に合っていなかったとみられる。 抜本的な対策の改善や法整備、第三者専門機関の設置などの対応が必要とされている。 (取材・文=冨田すみれ子/ ハフポスト日本版) Related... 街の強みは「多様性」。大久保の街で40年以上続く祭り、いま共に盛り上げるのは韓国やベトナムの人々 西武鉄道が、外国人も「住みやすい街」目指す10ヵ年プロジェクト。鉄道会社がなぜ?→留学生が多く住む沿線ならではの取り組み 日本でインドカレー店が激減する?それだけではない深刻な影響。「経営・管理」ビザの要件厳格化、日本で育った子どもへの余波も ...クリックして全文を読む
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