日米首脳会談で機能した憲法と最後の原油タンカー、そして高市首相の振る舞いなど全部乗せ
ハフポスト日本版

日米首脳会談で機能した憲法と最後の原油タンカー、そして高市首相の振る舞いなど全部乗せ

ホワイトハウスでトランプ米大統領と会談する高市早苗首相 トランプ大統領と高市首相による日米首脳会談が終わった。 日本中が、そして世界が固唾を呑んで見ていた会談。 多くのメディアがこれを「成功」と伝えており、それには大いなる疑問を感じるが、リアルタイムで公開部分を最後まで見て、ほっと胸を撫で下ろした自分がいたのも事実だ。 それは会談前、あらゆるメディアがトランプ大統領の予測不可能性にビビり散らかしており、その論調はどこをとっても「急に機嫌が悪くなってブチギレたらどうしよう」「ゼレンスキー大統領のように公開処刑的な目に遭ったら……」「突然突拍子もないこと要求してきたらどう対応すれば?」というものだったからだ。 が、実際会ってみると機嫌が良く、高市首相を絶賛し、トンデモない要求もなかったから一安心、それが「成功」という評価になったのだろう。 が、そんな論調に非常にモヤモヤした。なんだかこれって、「機嫌が悪くなったら突然ちゃぶ台をひっくり返す暴力親父とそれに怯える妻子」みたいな光景ではないか。 で、今回の会談は、「はぁ、よかった……。お父さん、今日は機嫌が良かった」「殴られなかったから大成功」と胸を撫で下ろしてるようなものではないのか。 が、それは相手が生殺与奪のすべてのカードを握っている状態だ。お父さんの機嫌を良くしようと子どもが「百点のテスト」を見せたり妻が好物を作ったりしても、「巨人が負けた」とかの理由で一瞬で不機嫌となり当たり散らすなら、こちらが何をしようと関係ない。 もちろん、見えないところでのもろもろの交渉はあるのだろうが、そんなものだって一瞬でひっくり返すのがトランプ大統領である。 それをとにかく防ぐために、会った瞬間の抱擁という形で機嫌をとって、「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけ」と持ち上げた高市首相。アメリカとイスラエルによる攻撃で命を奪われている人々がいるにもかかわらず、である。 そんな姿を見て、第二次トランプ政権が始まった昨年1月から、世界がどれほど振り回されてきたかを思い出していた。 「パリ協定」離脱やWHO脱退をはじめとして、反DEIやLGBTQの否定、気候変動を完全スルー。ハーバード大学への助成金を停止し、USAID(国際開発局)への予算・人員も削減。また保守活動家のチャーリー・カーク氏が殺害された直後は、自らに否定的な報道をする放送局の放送免許取り消しを示唆し、反ファシズム運動「アンティファ」を国内テロ組織に認定。捜査や解体を進めるよう関係機関に命じる大統領令を発出。そうして移民を厳しく取り締まり、それに異を唱える市民が射殺されていることは報じられている通りだ。 そうして今回のイラン攻撃。それだけではない。アメリカの圧力で燃料不足が深刻なキューバでは、停電によって死者が出ていると報じられている。 この1年3カ月、世界でもっとも強い国のトップの横暴に対して国際社会は何もできないという無力感を植え付けられてきた。そして今、さらに追い討ちをかけられている状態だ。 そんなトランプ大統領に世界は振り回されっぱなしだが、それこそがトランプ大統領の常套手段であり、わざとやっているという前提を今一度、共有したい。 突拍子もないことを言うのではという不安を植え付けて振り回す。撹乱し、相手を混乱させ思考停止の状態にさせる。その手口は驚くほどDVや洗脳と一致するもので、トランプ大統領は今の地位に就く前からそうやって「ディール」し、自らの価値を高めてきたのだろう。そのやり口がもっとも得をすると熟知しているのだろう。 このような相手への対処で一番良くないのはビビって振り回されることであることは間違いない。難しいのは承知だが、そのような相手と対峙する攻略法について、もっと策を練るべきではないのか。 さて、そんな状況の中、ホルムズ海峡封鎖によって、「最後の中東発原油タンカー」が22日、日本に到着した。これで依存度94%の中東からの原油の供給は途絶えるという事実にゾッとする。 「備蓄がある」と言っても限りがある。事態の収束は見えない。 ただでさえ4年以上にわたる物価高で苦しむ私たちの生活はどうなるのか。ガソリンは? エネルギーは? 食料は? 考えるほどに絶望的な気分になってくる。値上がりもそうだが、「手に入らなくなるもの」だって出てくるだろう。本格的な影響が出てくるのはこれからだと言われるが、果たしてこの夏を越せるのか? という不安の声が早速周囲からも上がっている。 「ここまでなんとか生き延びてきたけど、トランプに殺されるかも」というロスジェネの声を聞いて、何も言えなかった。このままでは、戦争に巻き込まれずともトランプ大統領の暴挙が、この国の弱い立場の人々の命を奪っていきかねない。 一方、会談での高市首相の振る舞いも話題となっている。はしゃいだり、トランプ大統領の手をさすったりが批判も呼んでいるが、何かその姿に痛々しささえ感じるのは私だけではないだろう。そうやって生きてきたんだな……と思わず遠い目になってしまう。 「あの世代独特の振る舞い」「バブル丸出しで恥ずかしい」と言う人もいる。が、私は世代だけでもないと思う。そもそも自民党がそういう組織なのだろう。 例えば昨年10月の高市政権発足直後、広報本部長に鈴木貴子議員を抜擢したことについて、高市首相は「絶対にそうなってほしいと思って頼み込んだ」と話している。 理由は以下の通りだ。 「非常に発信力があるし、ああ見えて、とっても細やかな気遣いをする人だ」 「(鈴木氏は)茂木候補に付いて移動していた。いつもハツラツなところしか見ていなかったが、細やかに、背広に埃がついてないか、それを取るコロコロまで持って歩いていた。飛行機に乗ってわずか一時間の移動でも、(茂木氏のために)セーターを出したり、(移動が)終わったら背広を着せたり、いろいろなことをしていた」(産経新聞) そんな茂木氏は2021年、20ページ超の「接遇リスト」(嫌いな食べ物やよく飲む栄養ドリンク、使ってはいけない航空会社の情報など)があることが報じられ、そのパワハラ体質に大きな注目が集まった人だが、このコメントはその体質が今も健在であることをはからずも裏付けているのではないか。 そんな「気遣い」ができる鈴木貴子議員は現在、40歳。しかも彼女の父親は鈴木宗男。著名な政治家の子どもという二世であっても、「女性」にはそういう行動が求められる体質があるのだろう。 と、ここまで書いて、思った。そんな中で生きていたら、パワハラ男やDV体質の男の扱いに慣れていて当然なはずだと。そう思うと、高市首相にとってトランプ大統領は「自分のよく知るタイプの扱いやすい男性像」なのかもしれない。 さて、そんなトランプ大統領に日本は11兆円の「お土産」まで差し出したわけだが、予測不能な相手が何を言い出すのか、今後もまったく安心はできない。 そうしてこの会談で注目したいのは、憲法だ。 高市氏は今回の会談後、「日本の法律の範囲内でできることと、できないことがあるので、詳細にきっちりと説明した」と語ったが、同席した茂木大臣は、会談で憲法9条の制約を含めて説明し、自衛隊派遣は極めて難しい日本の立場を伝えたと明らかにしている。 改憲に前のめりな高市首相だが、この局面では9条を盾にして、「できることと、できないこと」を伝えたのだと思われる。9条がメチャクチャ機能したわけだ。 が、アメリカの国連大使は22日、「日本の総理が自衛隊による支援を約束」したと主張。さっそくいろいろと噛み合っていない模様だ。 そうして憲法9条がバリバリに機能した会談から4日後、自民党の2026年の「運動方針原案」が報じられたのだが、そこには憲法改正原案を作成し国会提出を目指すとした上で、「強い覚悟を持って改憲の早期実現に全力を尽くす」と明記されていたという。 いやいやいや、とツッコミたくなるが、とにかく今回の会談が今後の改憲議論にどんな影響を与えるのか、与えないのか。いろいろと問題は山積みだが、注視していきたい。 (2026年3月25日の雨宮処凛がゆく!掲載記事『 第755回:日米首脳会談で機能した憲法と最後の原油タンカー、そして高市首相の振る舞いなど全部乗せ。の巻(雨宮処凛) 』より転載) Related... 自民圧勝の衝撃と高市人気〜この国で生きてると、「明るさの兆し」や停滞した空気の変化に飢えるのはそりゃわかるけど AIが主導する戦争と、「戦後」に起きてきた悲劇、そしてトランプ大統領への「忖度」で歪む世界 「移民政策反対デモ」と、いつまで発信できるかを割と本気で考えるこの頃 ...クリックして全文を読む

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